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紙の書類をデータ化するにはどんな方法がある?業種別のモデルケースもご紹介

多くの企業ではデジタル化が進んでおり、具体的な業務改革の第一歩として紙の書類のデータ化が挙げられます。

しかし、デジタル化のノウハウがない企業にとっては、どのように取り組めば良いのか分からないケースも少なくありません。

そこで本記事では、紙の書類をデータ化するための具体的な方法や、参考にしていただきたい業種別のモデルケースについても詳しく解説します。

紙の書類をデータ化する方法とは?おすすめの手段を比較解説

契約書や請求書、領収書などの書類をデータ化するためにはさまざまな方法があり、用途に応じて使い分けることが大切です。

その中でも一般的なスキャナーとOCRを活用したデータ化の流れと、複合機やスマートフォンアプリの機能の違いも合わせてご紹介します。

スキャンとOCRで文書を電子化する基本の流れ

スキャナーとOCRで書類をデータ化する際には、主に以下の手順に沿って作業を進めます。

1.事前準備

はじめに、事前準備としてスキャナーで読み取る書類を整理します。

読み取る書類を分別することはもちろん、書類を留めているクリップやホチキスの針なども取り外しておきます。

事前準備を怠ってしまうと、書類をスキャナーで読み込むのに多くの時間を要したり、書類のフィーダーにクリップやホチキスの針が挟まってしまい故障の原因にもなります。

2.スキャニング作業

事前準備が完了したら、書類をスキャナーで読み取るスキャニング作業に移行します。

このとき注意したいのが、スキャナーの適切な解像度を設定しておくことです。

スキャナーによっても解像度は異なりますが、一般的な書類や本をデータ化するのであれば300dpi程度が目安となります。

一方、書類の文字が小さかったり、細かな図表やイラストなどが含まれている場合には400dpi〜600dpi程度の解像度が理想的です。

また、OCR機能が備わったスキャナーを使用する場合には、書類を取り込む際に必ずOCRを適用する設定にしておきましょう。

3.スキャンデータのチェック・修正

スキャニング作業が完了したら、ファイルを開いて正しく書類が取り込まれているかを確認します。

スキャニング作業の際に書類が曲がっていると、一部が見切れている可能性もあるため、そのような場合には再取り込みが必要です。

また、スキャナーの解像度が低すぎると文字が不鮮明になり、OCRでの読み取りができなくなることもあります。

4.保存

スキャンデータが正しく取り込まれていることを確認したら、ファイルを格納していきます。

膨大な量の書類を取り込むと、どの書類をどのファイルに格納したか分からなくなることも多いため、後で見返した際に内容を把握できるよう格納場所やファイル名のルールを明確に定めておきましょう。

スキャナー・複合機・スマートフォンアプリの使い方と機能の違い

一口にスキャナーといっても、スキャニングに特化した専用スキャナーと、コピーやFAXなどの機能も備わった複合機、スマートフォンのカメラで撮影するだけで取り込めるアプリなどがあります。

それぞれの使い方の特徴や機能の違いを一覧にまとめました。

専用スキャナー複合機スマートフォンアプリ
使い方PCに直接接続して使用ネットワークに接続し複数人で使用も可能スマホのカメラで撮影
機能スキャニングのみOCR内蔵の機種も存在ADF(自動原稿送り装置)対応の機種は大量の書類も連続読み取りが可能高解像度・高画質の機種も存在スキャニングのほか、コピーやFAXにも対応OCR内蔵の機種も存在ADF(自動原稿送り装置)対応の機種は大量の書類も連続読み取りが可能スキャニングのみOCR内蔵のアプリも存在
特徴シンプルな操作性と高解像度複合機に比べると安価メンテナンスの手間がほとんどないスキャニング以外にも機能が充実オフィスでの利用に最適データの共有がしやすい大掛かりな装置が不要で手軽に使える無料で使えるアプリも豊富導入コスト・運用コストが安価

関連記事:紙媒体をデータ化するメリット方法を徹底解説

紙媒体をデータ化するメリット

紙媒体のデータ化と聞くと面倒に感じられる方も多いかもしれません。

しかし、企業にとってはさまざまなメリットが期待できます。

コスト削減

書類を紙のまま管理するとなると、用紙やインクといった印刷にかかるコストはもちろんのこと、FAXの送受信にかかる通信費、さらにはファイリング用具やメンテナンスなどの維持管理費用がかかってしまいます。

しかし、データ化することでこれらの費用を大幅に削減でき、電子化したデータは無制限に複製や配布が可能なため、郵送や出張による移動コストも不要になります。

スキャナーの導入で一時的に費用がかかったとしても、長期的に見れば事務コストを抑えられ、予算を有効に活用できるようになります。

検索性・業務効率の向上

電子データはキーワード検索やAIを活用した自動分類が可能であり、必要な情報を瞬時に抽出できるメリットもあります。

これにより、紙のファイルを手作業で開く手間や、書類の所在確認に費やす時間を大幅に短縮できるほか、情報の二次利用やデータ分析もスムーズになり全体の生産性が飛躍的に向上します。

保管スペースの削減

書類のデータ化によって紙の物理的な保管が不要になると、キャビネットや書庫、倉庫などのスペースも不要になります。

それまで大量の書類を保管していたスペースを別の業務エリアや会議室、休憩スペースなどに転用でき、賃料の節約はもちろんのことオフィスレイアウトの最適化にも貢献できます。

情報の紛失・劣化防止

紙の物理的な保管は火災や水害、盗難による消失リスクや、経年劣化による変色・破損のリスクがあります。

しかし、電子データはこのようなリスクがなく、適切なバックアップや冗長化を行うことで安全に保全できます。

特に法務関係や税務関係、取引先との契約書など、厳重な管理が求められる重要書類に適した方法といえるでしょう。

情報共有・リモートワーク対応

クラウド上に電子データとして保存しておくと、社内外を問わずネットワーク経由で同時アクセスが可能です。

リモートワークが一般的な働き方として定着した昨今、データ化は合理的な書類の管理方法であり、円滑なコミュニケーションと意思決定を実現します。

セキュリティ強化

物理的な書類の管理では重要書類の紛失・盗難リスクがあったり、機密情報を盗み見られ外部に漏えいするリスクもあります。

電子化した文書にはアクセス権限を設定し部外者の閲覧を制限できるほか、ログ管理によって誰がいつアクセスしたのかも適切に管理できます。

また、暗号化など高度なセキュリティ対策も施せるため、サイバー攻撃による情報漏えいのリスクも最小限に抑えられます。

紙のデータ化を行う際に注意すべき点とは

紙のデータ化は便利で業務効率化が期待できる反面、さまざまなリスクがあることも事実です。

初めて紙のデータ化に取り組む際、特に注意しておきたい3つのポイントをご紹介しましょう。

情報漏えい

物理的な紙に比べ、電子データによる書類管理はセキュリティ強化につながるものの、情報漏えいのリスクがゼロというわけではありません。

セキュリティ対策が不十分な場合、サイバー攻撃の標的となりネットワーク経由で機密情報が社外へ流出するリスクがあります。

電子データで管理する場合には、ネットワーク機器やアプリへのアクセス権限を厳格に管理し、保存先サーバーやクラウドは必ず暗号化通信を用いましょう。

また、万が一端末を紛失した際に備え、リモートワイプや自動ロック機能を有効化しておくことも大切です。

OCR処理時の誤認識や変換ミス

AIの発達によりOCRの認識精度は高まっていますが、決して100%ではありません。

たとえば、紙面に汚れがあったり、文字のフォントによっても誤認識が起こることがあります。

実際にOCRを活用しているユーザーの9割以上が誤認識の経験があると回答しており、重要書類をデータ化する際には二重チェック体制を構築しておくことが重要です。

電子帳簿保存法に対応しているか

電子帳簿保存法の改正により、2024年1月以降、電子取引での税務関係書類は紙による保存ではなくデータによる保存が義務化されました。

スキャンデータを保存する際には、改ざん防止のためのタイムスタンプ付与や検索要件を満たすデータ登録が必須となっています。

そのため、紙のデータ化を行う際のシステムは国税庁が指定する要件(解像度・保存期間など)に対応しているか、あらかじめ仕様を確認し社内規定にも反映しておきましょう。

関連記事:電子帳簿保存法に違反すると罰則がある?導入しない場合はどうなる?

紙のデータ化に成功した企業のモデルケース

紙のデータ化を推進したくても、どのような業務に取り入れれば良いのか分からないという企業も少なくありません。

そこで、実際にデータ化に取り組み成功した企業の事例をいくつかご紹介します。

【医療機関】電子カルテの導入

医療業界では長年、紙に印字したカルテを物理的に管理するケースがほとんどでした。

しかし、患者の数が膨大になるとカルテを探し出すのに時間がかかり、一刻を争う急患対応では処置が遅れるケースもありました。

そこで、紙のカルテをデータ化し電子カルテに移行することで、患者の情報や過去の治療履歴なども瞬時に検索しスピーディーかつ適切な処置ができるようになりました。

【物流・運送業】点検記録の電子化・クラウド化

国内外での海上輸送を手掛ける企業では、安全な船舶の航行を実現するためにそれまで紙で管理していた点検記録を電子データ化し、クラウド保存へと移行しました。

これにより点検記録のリアルタイム共有が可能になり、万が一トラブルが発生した際の対処や原因究明にも素早く対処できるようになりました。

今後はさらにDX化を推進し、配乗管理や船員の育成にも積極的に取り組んでいくとしています。

【製造業】データ一元化による業務プロセスの標準化

製造業では生産する製品によって業務プロセスが異なり、各部門が独自のマニュアルを作成し管理しているというケースが少なくありません。

しかし、このような運用では業務プロセスのムダに気づきにくく、生産性が上がらない原因にもなります。

そこで、ある大手電機メーカーではDXの一環として業務プロセスやコード・マスタをデータで一元的に管理し、業務プロセスの標準化に取り組んでいます。

全社で一元的に管理することで業務のムダに気づきやすく、客観的なデータを経営戦略にも活かせるようになりました。

【小売業】店長会議の資料をデータ化

全国に数百店舗を展開する大手小売業者では、定期的に全店の店長が参加する会議を実施しており、そのたびに会議資料を印刷し配布するという手間がかかっていました。

そこで、タブレット端末を用いた会議のペーパーレス化に踏み切り、毎月6万枚におよぶ印刷コストの削減に成功。

さらに、従来は印刷コスト削減のために、モノクロ印刷で1枚の書類に情報を詰め込むなどのルールがありましたが、ペーパーレス化後はそのような必要もなくなり資料作成の自由度も増したといいます。

【官公庁・自治体】電子決済システムによるペーパーレス化

官公庁や自治体には、日々さまざまな申請・届出が集まり、従来はその多くが紙でやり取りされていました。

しかし、昨今ではスピーディーな意思決定とコスト削減、住民の利便性向上などを目的としてデジタル化が進んでいます。

自治体によってもデジタル化の進捗率は異なりますが、すでに半数以上の申請業務をデジタルに置き換えたり、押印を原則廃止に踏み切るケースも少なくありません。

自社で行う?外注する?紙のデータ化の依頼先を選ぶポイント

紙のデータ化は自社で行うこともできますが、膨大な量を処理するとなると多くの時間と手間がかかります。

そこで、外部の専門業者に紙のデータ化を委託することも有力な選択肢となるでしょう。

委託する際にかかる費用の相場や注意点などを詳しくご紹介します。

自社対応と業者代行サービスの違いと費用モデル

紙のデータ化にかかる費用は業者によってもまちまちで、A4サイズの書類1枚あたり6円程度で依頼できるところもあれば、数十円のコストがかかる業者も存在します。

一般的に解像度やカラーの有無などによってコストは変わってきますが、それ以外にも書類の保管やスキャニング後の処分、図面などの大判スキャン、裁断の必要がないスキャニング、充実したセキュリティ対策など、各社さまざまな強みを活かしたサービスを展開しています。

自社にスキャナーや複合機などがあれば自前でデータ化をすることも可能ですが、作業に慣れていないとデータ化に時間を要し、本来の業務に支障をきたしてしまうことも。

定型的な業務を外部の業者に委託することで、コア業務に専念し生産性を高められる可能性もあります。

利用する際の注意点と事前に確認すべきこと

紙のデータ化にかかる費用はまちまちですが、単に安い業者を選べば良いというわけではありません。

たとえば、大量の書類があり原本の保管が必要な場合には、書類の保管や管理、廃棄も含めて依頼できる業者が理想的といえるでしょう。

また、機密情報が含まれる契約書や個人情報が記載された申込書を扱う場合には、セキュリティ対策が万全であるかも重要なポイントとなります。

プロセス・マネジメントのデータ入力・スキャン代行サービス

紙のデータ化を依頼する際には、できるだけコストを抑えつつ信頼性の高い専門業者を選びたいものです。

業者選びでお困りの方は、プロセス・マネジメントのデータ入力・スキャン代行サービスをご検討ください。

A4サイズのモノクロ書類であれば1枚5円からというリーズナブルな料金設定で、OCRによるデータ化やデータ入力、名簿入力などのオプションもご利用いただけます。

関連記事:テキスト入力代行を活用して業務効率をアップ

まとめ

多くの企業が紙のデータ化に取り組み始めていますが、中小企業の中には依然として紙のやり取りが中心でデジタル化が進んでいないケースが少なくありません。

紙のデータ化は業務プロセスの効率化やミスの削減において重要な取り組みであり、持続的な経営に向けた投資の一環でもあります。

スキャナーや複合機があれば手軽に実践できるため、まずはDXに向けた第一歩として取り組んでみてはいかがでしょうか。